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R・Classics060+1S「 しけ引き 」 
10Years after 六義×京都奥深く
R・ClassicS
bespoke
きもの
no. 60+1
anniversary edition
「 しけ引き 」
百歳から75歳へ
急な訃報でした。
いつか、とは覚悟していましたが、山中さんは「茶の格子」を遺作に残し、逝かれました。
私は山中さんの「しけ引き」について、以前、このように記しています。
■「毎日きものを着るようになる」とはアトリエを開いたときには考えだにしなかったことです、
ただ、なんでもやってみるものです、
この「二年間のきもの生活」において、私は様々なことを知り、いろんな方々、職人さんに出会いました、それは非常に私の人生を豊かにしてくれました、
あらたな次元へと導いてくれたと思います、
そして自分で意図したわけではありませんが、ソレは周囲から見るとモノ凄い「速度」で知識だけでなく出会いを「拡げ」ていったんだろうなと思います、
しかしそれでも、まだまだ深さを感じます、まだまだ、先がある、
それをあらためて感じさせられたのは、今回出会った「しけ引き」の職人さんの「仕事」です、
藤井絞りの藤井さんは「魂が震えるようなヤツをつくりたい」と口癖のように呟きますが、これはまさに「魂が震えました」、
私はこれこそ「クラシック」だと思いました、引き算をしていって最後に残る「きもの」だと思いました、
寂びがある、詫びもある、美しい、一枚として同じものは生まれない、「図案」であるのにもはや「絵画」の深さをもつ、どんな豪華な友禅にもまけない「逞しさ」がある、
ただひとつ懸念なのは、職人さんが満百歳であることです、
これはお目出度いことです、私もあやかりたい、百歳で現役は私の目指すところです、
しかし、やはり急いだ方が良い、この「しけ引き」はただしくこの職人さんだけに帰属するものなんです、そう確信します、
この「しけ引き」については語りつくせぬものがありますが、取り急ぎ「六義クラシック」として取り上げましょう。■
予想はしていましたが、こんなに早くその時を迎えるとは思いませんでした。
しかし、山中さんの遺志は娘さんに継がれました。
娘さんといっても75歳です。
山中さんの手とはやはり違います。もっと「優しさ」があり、しかし「芯」がある。
言葉をかえれば「きりっとしたところ」があるともいえるかもしれません。
百歳の職人に代わり、75歳の職人による「しけ引き」を承ります。
手は職人に宿る。
銀座×京都
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あえて、百歳の山中さんの「紹介記事」をそのまま残して、75歳の娘さんの紹介とさせて頂きます。
「今回の京都取材旅行では9軒の老舗を訪れた、京友禅の最高峰から京刺繍まで京都でも選りすぐった工房ばかりなので、すべてが印象深くみなさんにはほんとうに良くしてもらった、
いろいろとメンバーにご紹介したいものはあるが、
そのなかでも、「心が震えた」ほどのものがこの満百歳の山中さんの刷毛づかいの息遣いのする「しけ引き」である、
人間生きてるといろんなものに出会うものだ、
皇后陛下が昨年10月のご自身のお誕生日の御衣裳にえらばれたのも不遜ながら頷ける、
これは、究極の「美意識」のひとつなのだ、
「豪華」から解放され、「文様」からも解放され、「侘び寂び」だけでなく、「理知的」であり、それらすべてを包み込みそして精神として「先鋭」である、
けっして「枯れて」はいない、自己満足のいやらしさもない、
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あえていえば、これは百歳の職人が到達した「自由な絵画」である、
丁稚のころは生地を触らせてはもらえず、ただひたすら新聞紙を拡げて水をつけて刷毛をすべらせたということだが、
いまは「慣れればなんということもないんです」とひょうひょうと実にかろやかに刷毛を走らす、
満百歳はまったくブレがない、
その実、色のバランスを学ぶため10年間日本画を学び、興味のある展覧会は絵画に限らず、写真、グラフィックなどあらゆるものに足を運ぶ、工房の壁にはインスピレーションを感じた「切り抜き」がところせましと張られていた、
「自分だけの頭じゃたかがしれてます、よそのヒト、まわりのヒトの作品をみてたえず勉強しとかなあきません」、
職人は「根気があって、最後まで気を抜かない妥協しない、研究心がなければあきません」、事実山中さんの刷毛はすべて自身で改良されている、およそ大小あわせ30本以上あり、それを使う場所、場面がすべて違うという、
ただ、「予備はもってます」けど、それをつくる職人さんの方がいまはないそうだ、
「ええ柄をこしらえたらこうてもらえる、忙しなるのも暇になるのも、腕次第どす、」きっぱりしている、
百歳だろうが貪欲な現役の職人なのだ。」
75歳の娘さんは「芯の強さ」をもってらっしゃると思います。
「お父さんはお父さん」、「私は私」、
清く、優しい線を引く、
しかし、どこか「きっぱりとした」芯の強さがあるような気がします。
そしてお父さん以上に勉強家で、日本画を学んでいただけに、銀泥、金泥などをほそかに潜ませるという「技巧」を駆使もする。
お父さんよりも「画」に近い心づもりをお持ちなのかもしれません。
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bespokeですから、色も自由、濃淡の好み、「しけ引き」も斜め、横だけでなく「ぼかし」も指定できます、
白生地も特別織りの素晴らしい縮緬の広幅を使おうと思います、紬も良いと思います。
贅沢な限り、
濃淡、或いは斜め縞と横縞で羽織と長着をあわせても素晴らしくエレガントだと思います、
「きもの」といえど、いや「きもの」だからこそ、
アトリエ独自の仮縫いを行います、
いままで、きものに入念な補正、スタイリングをしっかり意識した仮縫いがなかったのがおかしい、と私は思います、
いっぱい愉しんで幸せになりましょう、
(*価格は「きもの(長着)」の仮縫い、仕立て代込みの値段です。)
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