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王様のたまご
 
 
 
 
番号 : 23「 王様のたまご」 第三章 解放 3修正 削除
 
  書き込みをした方 : R.H. (bespoke@rikughi.co.jp) 日付 : 2013.10.07 17:37  
 
 
 


「 王様のたまご」 第三章 女怪盗 3





ケイ・アビダス・エステスは文字通り、オイラートの市場の隅々まで知っている。

まるでケイ自身がオイラートの市場について詳細に記された分厚い一冊の辞書であるかのように市場の路地に生えている草の種類や石のかたちさえまでも覚えていた。


市場はケイにとっての遊園地であり、学校であり、そして避難場所でもあったのだ。



「避難場所」だと言ったのには訳がある。

ケイの父親は妻、すなわちケイにとっては母親を亡くしてから酒に溺れ始め、ついにはケイに暴力をふるいも始めたからだ。


酔っぱらうと次第に怒鳴り散らしはじめる父親とひと部屋しかない家にいるのは息が詰まる。


ケイにはオイラートの市場しか逃げ込むあてがなかったのだ。


夜のオイラートの市場をケイは父親から逃れてよく彷徨ったものだ。


蛇のようにくねった迷路をあてもなく歩きながら空を見上げると月だけはどこまでもケイについてきてくれた。


「まるでお母さんみたい。」とケイは細い両腕を思い切り伸ばして月に触れられないかと背伸びしながら思った。


父親は一種の「なんでも屋」だった。


オイラートの市場の店を回っては鍋釜の修理から、使い走り、店番などなんでも請け負って日銭を得ていた。


当然、ケイの母親は家計を助けるために内職に忙しかった。


幸い、母親は東の国で言う「まむしの指」を持つ女だった。

生まれながらの手先の器用さで腕の良い裁縫師だと評判だった。


しかし器用貧乏というまさにその言葉通り、朝から夜遅くまで、ときには睡眠時間を削ってまで頼まれ仕事に追われていて、


みんなは母親の性格のか弱さ、人の好さにつけこんでひどく安い手間賃で無理を承知の仕事さえ押しつけた。


家族はいくら働いても、粗末な家から抜け出せず贅沢など思いもつかなかった。


それでも父親と母親、ケイの三人が家族として寄り添っている間は今思うとそれなりの幸せな時間だったといえるだろう。


母親は手先の器用さとは反対に、人生についてはあまりに不器用だった。いや、「お母さんは誰をも信じていたかったんだ。」と母親の遺伝子を受け継ぐケイは思い続けていた。


ケイと同じく貧乏な生い立ちは変わらなかったが、田舎で素直に育った母親には「信ずる」ことしかできなかった。都会の複雑な感情の駆け引きとは無縁の女だった。

朝から夜遅くまで無我夢中で働き続ける妻を良いことに父親は市場の魚屋の雇われ女に手を出した。


本人は間がさしたと弁解することだろう。事実、父親は悪人というわけではない。


むしろ小心者の部類に入った。


雇われ女もひとつの家族を崩壊させるつもりなどなかったと言うことだろう。


男の優しさにしばし孤独な身の上を忘れられれば良かった。婚姻を望んだわけではない。


基本的には全員が善人だったといえるかもしれない。


少なくとも父親と雇われ女は都合よく表面上はそのままに危うい均衡を保つことを望んでいた。


しかし悲劇はだからこそ生まれた。



父親と雇われ女は働き者の母親に気兼ねしながらも縁が切れなかった。


それはからだを合わせる快楽が忘れられなかっただけではなかった。結局、二人は似た者同志だったからと理由づけられるかもしれない。


父親は雇われ女と他愛もない話をすると何故か心が安らいだ。


血も繋がっていない、昔からの知り合いというわけではない、事実はつい最近知り合った相手のはずなのに何故か心を許す繋がりを発見していた。


魚屋の裏手にある狭いけれど整頓された女の部屋で窓辺にもたれながら二人は生い立ちを語り合った。











記事の無断転載、画像の無断複写を禁じます。
copyright 2013 Ryuichi Hanakawa
 
 
番号 : 22「王様のたまご」 第三章 市場 2修正 削除
 
  書き込みをした方 : R.H. (bespoke@rikughi.co.jp) 日付 : 2013.10.03 00:40  
 
 
 




「王様のたまご」 第三章 市場 2



オイラートの市場の迷宮を彷徨っていて、


ふいに、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と目にも鮮やかな虹の七色で塗り分けられた家々に囲まれた広場が現れ出たなら、


そこが有名な「虹の辻」である。


「虹の辻」はその名の通り広場を中心に虹の七色に命名された七つの通りが放射線状に広がっている。


そのロマンチックな名に反して、この広場にはつい十年前まで大規模な屠畜場があった。


その屠畜場は強欲な商売で悪名高かったクラート一族によって取り仕切られていて、

夜明けから陽が沈むまで牛や馬や羊やあらゆる動物がひっきりなしに運び込まれ食肉とされるため首を切り落とされ解体されていた。


クラート一族はこの広場に屠畜場を中心とした肉の加工から革のなめし業までの一連の作業場を集め、


オイラート市場に逃れこんでくる貧民やお尋ね者さえ雇い入れ雀の涙ほどの低賃金でこき使い商いをひろげていった。


七つの辻は屠殺、解体、加工、鞣しなど職種によって色分けされていた。

住人たちはクラート一族の「見張り」から氏名ではなく「赤」とか「緑」とか通りの名で呼ばれていた。


各仕事場の上の粗末な板敷のタコ部屋に労働者たちは半ば監禁されるように暮らしていた。


「労働環境」と呼ぶのもおこがましいほどの劣悪な暮らしぶりで、


「虹の辻」は血と内臓と動物の匂いが入り混じった異臭がしみ込んでいた。


それはここに住む者の運命の匂いだ。

不潔極まる「虹の辻」の人間たちの匂いもたしかにその異臭の一部としてあり、


その扱いも解体されるために運び込まれる「無名」の「動物と何ら変わりはなかった、


遅いか早いかの違いはあれこそ行く末に変わりがあるとは思えない。


「虹の辻」の石畳の路地にはそこかしこに生暖かい動物の血が内臓の切れ端とともに血だまりをつくり、


底冷えのする冬の日にはその血だまりから陽炎のように湯気が立ち昇ぼった。


なめし工場からの腐敗臭は息もつげないないほどで乳幼児の多くが衛生的な問題で短い命を終えた。




クラート一族の「見張り」はGSと呼ばれていた。


黒革の鞭と先に太い釘が飛び出た棍棒で武装していて、四六時中、住人たちを見張っていた。

働きが遅いと容赦なく鞭打ち、過酷な労働を強いた。


無理がたたって身体を壊す者は後を絶たない。


病に伏せるまでではなくとも「虹の辻」の住人は皆、足や手やどこかしらが傷ついていた。


重い荷物を運ぶのを急かされたためにささくれた戸口にぶつけ擦り傷をつくり、

まともな手当も出来ぬためボロ布を巻いたままの傷口はやがて膿んでくる。


破れた靴を履き、泥にまみれ、見張りにこずかれ、傷つき、固い寝床でがたがたと震えながら歯を鳴らす。


「虹の辻」は体の良い牢獄であった。


その一方で、クラートの長男は何でも、王侯貴族しか別荘を持てないライル湖畔に金襴豪華な邸宅を構えたそうではないか。


「虹の辻」の住人がみたら腰を抜かしそうな鷹の刺繍が細密に施された絹のガウンを身にまとい夜ごと豪奢な月の宴を催していると聞く。



天の神はこの理不尽な不均衡を黙って許されるのかと「虹の辻」の住人たちは呻いた。


その呻きは地の底で響きとなり、遂に暴動がおこった。



きっかけは一人の少女だった。













記事の無断転載、画像の無断複写を禁じます。
copyright 2013 Ryuichi Hanakawa
 
 
番号 : 21「王様のたまご」 第三章 市場 1修正 削除
 
  書き込みをした方 : R.H. (bespoke@rikughi.co.jp) 日付 : 2013.09.29 01:01  
 
 
 


「王様のたまご」 第三章 市場 1



東の国の中心部にあるオイラート通りには七世紀から続く大市場がある。


カニアリア海で獲れる豊富な魚介類から、近頃では交通網の発達で地方や近隣諸国から珍しい果物や野菜も持ち込まれるようになった。

オイラートの市場は東の国の市民の台所として賑わいが途切れることはない。



市場の正門から百メートルもはいったところには巨大なリヴィアサンの彫像で飾られた水場があり、いまも湧水がこんこんと溢れている。


市場で働く人々はこの湧水で毎日、銀色の鱗が輝く魚をおろし、野菜や商売道具の包丁を洗う。


市場を訪れる多くの人たちもこの水場で喉を潤す。


もうリヴァイアサンの伝説を知る者は少なくなったが、

この海の怪物が守る水場はオイラートの市場のシンボルとして長く親しまれている。




リヴィアサンは神が天地創造の五日目に造りだした巨大な海の怪物である。


神様の傑作と言われるベヒモスと二頭で一対とされ、

ベヒモスが「最高の生物」ならリヴィアサンは「最強の生物」とされている。


リヴィアサンの硬い鱗はいかなる武器をもはじきかえす。


巨体で波を渦巻かせながら海を泳ぎ、ぎらぎらとした目で獲物を探し、

獲物をみつけると、口から炎を噴き、鋭く尖った巨大な歯であっという間にかみ砕く。

鼻から煙を吹き出しながら雄叫びをあげる姿は凶暴そのもので、神様は当初、つがいをつくりだしたが、

あまりの冷酷非情さに繁殖するのは危険だと、雄は殺され雌だけしか残っていない。

その代わり、残った雌は不死身とされている。神はベヒモスを雄とし、リヴィアサンを雌として一対にしたもうたとも伝えられる。


しかし、この一対の聖動物は世界の終末にはお互いが死に至るまで戦わされ、その肉体は選ばれし者、つまり王家の食べ物として供される運命にある。


オイラートの大市場はそのシンボルであるリヴィアサンそのものに似ていた。


歴史を経るごとに市場はクモの巣をはりめぐらすように路地を広げ、永遠の迷宮をつくりだした。

好奇心にかられ迷い込むと帰り道を見つけ出すのに途方にくれることだろう。

これほど歴史のある市場なのに店には番地が一切つけられていなかった。

役所がこの市場の公式な内部地図をつくったという記録もない。

昼なお暗い市場の一隅には小物商を装いながら実は盗品を売買する泥棒市が存在するのだとも噂され、

お尋ね者や外国人の亡命者が潜んでいるとも囁かれている。


そういう性格をもつ市場だからか、ここで働く者はその場の商いのやりとり以外は外部の者に対して寡黙である。



この市場は、「闇」を飲み込んだ怪物であると同時に、行き場を失った日陰者にとっては硬い鱗で身を守ってくれる最後の砦、


不可触の神の城でもあるのだ。














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copyright 2013 Ryuichi Hanakawa
 
 
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